ちびまる子

たまちゃん 皆藤愛子


日本全国、子役ファンを満足させたであろう2時間であった。
枠的に小学生からお年寄りまで幅広い視聴者層を意識した時間帯・内容だったが、
まっこと素晴らしい出来であった。バラエティ枠だけにその要素が強く
確固としたドラマでなかった分、気楽に見られたと思う。
うちでも見られて本当に良かった。見られなかったら泣いていた。


このクォリティはスペシャルでしか、また、
今回の子役が成長するまでのごく短い時間に限られることだろう。
続編を作るなら早急に制作にとりかからないと子役の成長に間に合わない。
小学生子役のスケジュール的に次の夏休みを活用するのが妥当なところか。
帯枠でのドラマ化もTBS愛の劇場枠のような枠を持たないフジには厳しい。
東海テレビ枠のドロドロ枠には到底そぐわないし、ごきげんようも動かせない。
これはもう一度スペシャルでやるか、映画化しかないな。


かつて同じ普遍性を有するアニメ「サザエさん」の実写版の制作が幾度となく試みられたが、
キャラクターは磯野家を中心とするもので、特にカツオの学校の友達がクローズアップ
されることもなく、サザエさん一家の個性的な面々といったニュアンスで作られたものだ
ったように思われる。サザエさんの世界観は現代的な感覚からするとすこしずれた世界観
で、取り上げられる内容もより季節感溢れる普遍的な内容が多用される。


一方でちびまる子は、ギャグの要素も欠かせず、現実にはありえないような
個性的なクラスのメンバーや家族の存在がフィクション性を意識させるものの、
秀樹や百恵ちゃん、「なみだの操」など現実世界とリンクするものを使用して、
さもありがちな昭和40〜50年代感を表現している。昨年「ALWAYS三丁目の夕日」の
成功からノスタルジックな憧憬を現代日本が抱いているとすれば、そこのあたりにも
ぴったりとハマるコンテンツだ。2匹目のどじょうを狙うなら今しかない。


どちらがよいかという判断をするのはナンセンスだ。
どちらにも美点があり欠点がある。それでも数字を残せる優良コンテンツだからこそ、
長寿番組たりえて、今回のように記念ドラマも作られる。
エンターテイメント性から考えると、ちびまる子の方が上であろう。
フィクションだとわかっているもので楽しめる現実との限界の線をわきまえている。
フィクションといっても超科学的な要素は微塵もない。どこにでもありそうなのが重要。
そして当時のアイドルや流行ったものを作品中に登場させることで、
サザエさんにはないリアリティも作り出すことも可能で、その意味では実写化に
耐えられる作品だろう。サザエさんは、普遍的であるように見えて、実際は
現在の日本にあまりいないだろう家族像を提供している。理想的だと頭の中にはあるかもしれないが。


どちらにしろ、向き不向きがあるわけで、今回の実写化は
出来上がったものの質からすれば、成功だったと思われる。
バラエティ枠・アニメ原作ということで、実写化されるにしても目を瞑れる部分が多かった。
今後の展開がまだ予想できないが、それなりの数字を残せば
新たな企画が動き出すのも想像に難くない。


さて、今回の実写版の内容を見てみよう。キャラ別。


事前の情報では、たまちゃんが美山加恋ちゃんであることとその成長した姿を
めざましテレビ皆藤愛子が演じること。まる子の成長した姿は木村カエラが演じること。
おねぇちゃんが福田麻由子ちゃんであること。が注目すべき点であったが、
それ以外にもたいそう面白い点が多かったドラマだった。


主人公・まる子を演じた森迫永依ちゃんは、これまでなかなか大きな役どころを
得ることができずブレイクとまではいかない存在だったが、今回の出来から見て、
今後の活躍は想像に難くない。なんだよ、あれは。天才か。原作から考えて
必要最低限の映像効果は必要だったかもしれない。それを必要だと感じさせない
ほどの表情の豊かさを披露。前歯が乳歯なのだが逆にグッド。
中国とのハーフというからまた驚く。中国語の子役も似合いそう。
大河でも一豊と千代の娘役をゲットしたと言うから楽しみだ。


ほとんど事前情報なくみたまる子だったが、成長したのが木村カエラだということを
意識してみると、なるほど雰囲気がぴったりだ。(髪型に影響されているかも)
おかっぱの髪は似合う子がすると恐ろしいものがあるな。
おかっぱができるのも子供の頃だけだと思うので、
もっとおかっぱが復権する、再ブームになってもおかしくないほどの
インパクトを今回のまる子は持っていたように思う。
このドラマを機に、うちの子もおかっぱに。なんて親はいないものだろうか。


先々週、鮮烈なるおかっぱ姿で朝のお茶の間に登場したたまちゃんこと
美山加恋ちゃんであったが、今回は三つ編みで登場。そして、たまちゃんの
代名詞でもあるメガネもきちんと着用していたが、レンズが時代を感じさせるのか
デカイ。三つ編み&メガネっ娘需要も明らかに満たしたその演技からは
子役界でも確固たる地位を獲得したともいえる安定感を感じることができた。
その安定ぶりから特に語るべきところを発見しづらいのもさすがの演技だった。
ほとんどイメージ映像のみだったが、大人になったたまちゃんも雰囲気残して
いたし、やっぱり「ややは虫類系」なのかなと思わせた。(失礼)


同じく、ツインテール需要をになったのがおねぇちゃん役の福田麻由子
もはや説明不要のU-15のスターであるが、落ち着いたおねぇちゃんを
演じるのはぴったり。ただギャグ的要素・壊れ加減になるとなかなか
はっちゃけすぎれないところが。青筋入れてまる子を追いつめるシーン
が映像化されていないこともあったが、そういうシーンも見てみたい
と思わせた。いままで見たことない顔が見れるかもしれない。
運動場でブルマー姿でこけちゃったりした時間帯には、
いろんな勘ぐりがあたまを駆けめぐった。


家族のメンバーはフルかつらで、高橋克実モト冬樹の髪をネタにする
俳優が親子でかつらをつけて登場しているのも面白かったが、
たまちゃんのお父さんが八嶋智人で、トリビアつながりかよ!と
ツッコミたくなる衝動も心の中で感じていた。しかし、おとうさんヒロシはともかく
たまちゃんのお父さんの方は原作と同じようにあまり前に出過ぎず、
過度な露出もなかったので、よかった。八嶋さんが演じるとどうもひと癖も
ふた癖もつけてしまいそうだが、そこは原作に忠実だった。
どうでもいいけど、友蔵・ヒロシの他の家族の名前って、
母・すみれ 姉・さきこ 婆・こたけ だったんだね。ばぁちゃんが新鮮。


クラスの友達についてみてみると、
はまじ・ ブー太郎あたりはまぁわかるのだが、
永沢くんあたりになるともはやビジュアル重視で、
山根もしっかり存在感を出していたし、藤木も藤木だった。
しかし藤木の髪型はあれでいいのだろうか。
小杉くんはリアル小杉くんが演じるという徹底ぶり。
杉山大野組はあいかわらず
いるのかいないのかわからないさわやかさで、
城ヶ崎さんみぎわさんはイメージ重視。
花輪くんはやりすぎぐらいの演技でよかったが、丸尾くん
思いきりのなさが目立った。もう少しカミーユ・丸尾感を表現してもよかった
と思うが、声をひきつらせるまでの演技は演出上求められていなかったのか。
山田ぐらいの踏ん切りが必要だったと思う。
どちらかというとマイナーな冬田さんで笑わせることも忘れない。
野口さんは意外とカワイイ子役が演じていたとの話。
とし子さんまでフューチャーされるとは新鮮。
最近のアニメのちびまる子を見ていないが、個性的な
友達はまだ増加中なのだろうか。


その他注目する点とすれば、
伊藤沙莉キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
というところ。まる子の学校では、6年生と1年生・5年生と2年生・4年生と3年生が
ペアを作って遠足やらの行事で一緒に行動することになっているそうで、
そのまる子のペアになったのが、伊藤沙莉だった。
女王の教室では福田麻由子と同じ6年生を演じていたが、
今回は4年生ということだったのだろうか。それにしては一緒に画面に
映ったときの身長差が1学年差には見えないものがあった。


完全にギャグ担当で、そばかすなんて気にしないわのキャンディ×2を
意識した妄想突っ走り型を演じていた。この子は決して万人受けする
タイプではないと思うが、演技の確かさはあるし、なんともいえない魅力がある。
美少女天才子役という枠内には入らないかもしれないのだが、
将来的に残っていくのは意外にこういうタイプかもしれない。


キャラ以外の部分では、富士山をバックに入れてみたりの努力が
みられたが、通学路が意外に現代的で少し興ざめた。
神社がとってつけたような鳥居でこれも萎えた。
他は学校やセットが多かったような気がしたので、さほど
バックを気にすることはなかったが、遠足で松ぼっくりを拾っている
まる子はかわいかった。やはりススキの中や自然と一緒だと
ほのぼのエピソードも一層際立つ。


さて、まる子や友蔵のどうしようもない面のギャグ要素も重要なファクターの
「ちびまる子」であるが、今回のエピソードに関しては、ギャグ要素よりも
感動話がどちらかというと目立っていた。これは、巻頭カラーでこち亀
感動下町昔話を持ってくるのに似ている。不覚にも涙腺を刺激された。
なにやっているんだろう、私は。


親子愛・姉妹愛・友達愛をエピソードに盛り込んだ驚異のバランスで、
最後のエピソードでは演技力に引き込まれた。前2つのエピソードでは
フフフとさりげなくほんわかさせる話で、心があったかくなるのを覚えたが、
最後のは完全に泣かせに来ていた。世間では既知のエピソードだった
ようだが、演技力のたまものと思える。いろんな意味で今後に期待させるドラマだった。