W杯の総括的なモノ


結局、最後はイタリアの優勝で幕を閉じました。
案の定、PK戦による決着になってしまいましたが。
勝戦が終わっても、しばらくはジダンの退場の話題で持ちきりですね。
個人的にはどちらかというとイタリアの方に優勝してもらいたかったので、
PK戦とはいえよかったといえばよかったのですが、後味の悪い試合に
なってしまいました。みんなジダンマンセーですか。挑発&報復、どっちもどっち。
しかしこれで、ドイツ大会=頭突きが後々の語りぐさになりはしないだろうか。
イタリアが優勝したことより印象に残りやすい決勝での出来事。
決勝ではまさにユベントスフラグが立って、そのまま成就。
PK戦でもユベントストレゼゲが外す。


※長いです。


優勝したイタリアにはやはりヒーローとでもいうのか、
なにかしら目立った男がいるわけです。
左SBのグロッソに、決勝で目立ったマテラッツィ
ネスタがグループリーグで毎度のケガをしなければ、
マテラッツィが決勝に出ていなかったかもしれないし、
そうなればあの頭突きもなかったと。面白いですね。
グロッソザンブロッタがケガで出遅れたために初戦のガーナ戦では
グロッソ・右ザッカルドで両サイドを組んだが、2戦目の米国戦は左ザンブロッタで右ザッカルドと、
スタメンから外れていた。米国戦でザッカルドオウンゴールをしなければ、
その後左グロッソ・右ザンブロッタという組み合わせは見られなかったかもしれないし、
オーストラリア戦のPK奪取にドイツ戦でのゴールもなかったかもしれない。
ドイツ戦で延長終了間際に均衡を破るゴールを
上げたあとのあの顔がとてつもなく印象的で、
あの状況になると、人間あぁなっちゃうのかなと思いました。
おまけにデ・ロッシが肘打ちで4試合出場停止のペナルティがまさか本大会中に
明けるとは、決勝では交代で出場しました。デ・ロッシがペナルティをうけていなければ
ガットゥーゾの奮闘もなかったかもしれないし、つくづく星の巡り合わせがよかったのかと。




12年ごとに決勝に進出。24年ぶりの優勝。
94米国W杯も12年前なんですね。しみじみ。
戌年に強いイタリア代表。大会前にだれがそんなデータを引用
してこようと思ったでしょうか。世間の注目はブラジルやイングランド
国内リーグの八百長疑惑のイタリアや前評判の決して高くなかった
フランスは、むしろスペインやオランダよりも「優勝候補」というラインから
外れて見られていた。
もっともイタリアの方は優勝予想していた人がそれなりに多そうです。
なぜって、メンバーも充実。ゴタゴタはあったものの、冷静に見れば、
強いメンバーが揃っていた。前回日韓大会の私の優勝予想はイタリアでしたけどね(汗)*1


開幕戦のミドルシュートの印象が強烈で、
あの新型ボールの存在もあって、今大会はスーパーゴールが
連発するのではないか、ゴールキーパーにとっては辛い大会になるでは。
との憶測も飛び交いましたが、決勝Tに入ってからは、なかなか点の入らない
拮抗した試合が多く、1点の重みを感じました。PK戦も多かったように思います。
見ている方としては、点が入って抜きつ抜かれつのシーソーゲームのが
楽しいのですが、そうはいきませんでしたね。オランダはそういう試合が
出来るチームとしても好きなのですが、ポルトガルの策略の前に屈しました。



ポルトガルはどこかオランダのにおいのする流麗なサッカーはするものの
勝ちきれない印象があったのだが、スコラーリ監督になってから結果重視というか
何が何でも勝利するという雰囲気が備わり、ラフプレーであろうがマリーシアであろうが
とにかく勝つという狡猾さが加わったような気がする。手持ちのコマとしては
スタメンのレベルから代わると下がってしまうほど選手層は決して厚くはなかったが、
ロナウドをセンターにいれたり、交代で入れられたシモン・ポスティガがそつなく
活躍して勝ち上がってきた。パウレタはやはりエリアのなかで勝負するFWなので、
中盤でガチンコの試合になると、まったく消えていた。イングランド戦でも一人優位
の状況を有効に行かせなかった。それはパワープレイ要員がいないこともあり、
ポルトガルのスタイルがサイドからドリブルで突っかけていくものだったからかもしれない。
とくに空中戦での驚異はあまり感じられなかった。マニシェのサポートがないとゴール前
での人数にも迫力がなかった気がする。それがスタイルなのかもしれないが。
ケガをしてしまったが右サイドバックのミゲルはその活躍が目立った一人。
フィーゴの後ろからオーバーラップする姿や、オランダ戦ではロッベンを抑える姿。
試合でよく顔を出していた。それだけにケガが残念。パウロ・フェレイラからスタメンを
奪ったのもよくわかる活躍だった。ポルトガルからはマニシェがMVP候補に挙がっていたが、
個人的にはGKのリカルドとこのミゲルの活躍があってこその上位進出だったかと思う。




ここで、個人的に特に感じたことを。
上位に進出したチームの特徴としては、やはり守備がしっかりしていたということ。
なかでも「守備(専門)的MF・汗かき役」の存在が大きいと思います。
ドイツのフリングス、イタリアのガットゥーゾ、フランスのマケレレポルトガルコスティーニャ
ベスト4に残ったチームには、一般にボランチと呼ばれる舵取り役(守備的MF)というより、
もっと守備的なMFが存在している。
守備がしっかりしたチームが残った大会としては、面白い現象。


同じ守備的な位置でも、バラックが攻撃重視なので
フリングスが相手の攻撃の芽を摘む潰し役として活躍。
同じように、イタリアの場合はコンダクターピルロが攻撃を彩るのに対して、
汗かき役としてガットゥーゾが献身的に動き回って守備と。
さらにさらに、フランスの場合は攻撃参加で得点も上げたビエラに対して、
マケレレが守備のバランスを取っていたと。
ポルトガルの場合、試合日程や控えを使ったこと、退場などもあって、
コスティーニャがずっと試合に出場出来たかといえばそうでなかったが、
控えのペティトが代わりになって、両サイドが攻撃的なポルトガルにあって、
DFの前で守備の仕事を果たしていたと言えます。
マニシェの方がミドルを狙うなど、攻撃的だったのを考えると
やはりコスティーニャが守備の役目ということですよ。


ともすれば両方攻撃的なボランチをすえたイングランドもありましたけどね。
ランパード・ジェラードの後ろにハーグリーヴスを入れたり試行錯誤していたようですが。
ブラジル・クァルテットマジコの後ろで抜群のバランスを見せたエメルソンとゼ・ロベルト
エメルソン・衣笠wは、ケガで惜しいことをしたが、ゼ・ロベルト
攻守のバランスは見ていていて惚れ惚れした。
ブラジルの要は前線の例の4人というより、このポジションの2人ですよ。
圧倒的な優勝候補と目されていたブラジルについてはどうだったのでしょう。


ブラジルの敗因は、攻撃的なタレントのネームバリューがあっただけに
代えづらくなって逆に機能しなかったこと。
ベテランのカフーロベカルにはかつての勢いはなく、
ロナウドアドリアーノは前線で動かずにフタをする。
前年のコンフェデでロビーニョアドリアーノロナウジーニョ・カカと
連動して繰り広げられた攻撃を想像していただけに、なんとも機能しない。
日本戦で2得点して復活したのかと思わせたロナウド
結局はフランスの世界レベルのディフェンスの前では何も出来ず。
ブラジル優勝のためには余計なことをしてしまった日本。
それまでにロナウドが使えずに先発からロビーニョ・あるいはフレッジ
使うという選択肢を監督が決断したならばまた別の結果になったかもしれない。
というのは結果論だろうか。


日本戦で控え組が多く先発して機能していたのは、日本が弱かったから?
いやいや右のシシーニョカフーの出来を超えていたし、ジュニーニョ先生の
強烈無回転ミドルもすごかった。ガーナ戦は相手の高いラインの裏をつけた
だけ。ガーナに決定力があったならば、押し込まれていて危ない試合だった。
序盤の2戦はまだウォーミングアップと考えられて、徐々にコンディションを
上げて行くと思われたブラジル。日本戦の4-1、ガーナ戦の3-0というスコア
自体は徐々に上がってきたコンディションをうかがわせたが、実際は
ウォーミングアップのまま大会を去ることに。


それまで世界の強豪と呼ばれるチームとの対戦がなかったブラジル。
いきなりのフランス戦で、世界レベルの守備のプレッシャーを受ける。
テュラムギャラスの人に強いディフェンスに加え、ビエラマケレレ
中盤の連動により、攻撃的中盤も止められる。この試合はスタメンから
アドリアーノに代わりジュニーニョ先生を入れて、それまでなかなか
活躍が出来なかったロナウジーニョにより前から攻撃参加してもらう。
という戦術が、パスの出す先であるロナウドが動かないために
ロナウジーニョも為すすべなし。自分がFWの位置に入り相手の
プレッシャーも強い中でなかなか機能せず、アドリアーノを入れて
ひとつ後ろから攻撃を指揮するようになってからようやく機能する。が、時すでに遅し。
この意味でこのスタメンは失敗。ジュニーニョ先生自身が悪いのではなくて
このシステムに入れられた不運。ブラジルもその力の片鱗を見せただけで
大会を去ってしまったような、なんとも不完全燃焼な印象だった。
見ている方に、チームで機能しなくても個人の力で打開できるという過信
があったのだろか。


すぐれた選手を揃えても、その使い道によっては無駄になってしまう。
その意味でブラジルをはじめとして、イングランド・アルゼンチンは
「監督の采配」によってその本来の力を発揮できなかった。
それに対して、優勝国イタリアのリッピ監督の采配はズバリ的中。
スタメンに入れた選手は活躍し*2、交代選手は点を取り、
伝統のカテナチオ+αの攻撃力を備えたイタリアは優勝するべくして優勝した。
最後に近づくにつれてほぼ固定されてきたものの、序盤のスタメンは調子を見てか毎試合変化した。
それでもそれに対応できる選手たちがあつまっていたおかげか、チームは機能していた。


以前のイタリアなら1-0で勝つ試合展開。リードしたら守り抜くと守備的な
選手を投入して結局ジリ貧になって敗れた前回大会のような結末。
今回は攻撃的選手を中心に投入してチームの士気も違った。
ドイツ戦の2点目のはかつてのイタリアには見られなかった象徴的なシーンだ。
終了間際に勝ち越したイタリア、あとは守るだけだが、DFで主将カンナバーロ
積極的なプレスで自陣ゴール前でボールをかっさらうと、
トッティに預け、ジラルディーノデルピエロと絵に描いたようなカウンターでとどめの2点目。
えてして消極的な采配をしたチームは敗れ去っている。


イングランドの場合、なんとも不可解な「ルーニーワントップ」にこだわるエリクソン
機能しないことを学習しなかったのだろうか。オーウェンとのツートップを予定して
いたのだろうが、結局クラウチルーニーのツートップは実現していないのではないか。
ルーニーは前線でタメを作れず、あきらかにクラウチを入れてルーニーを前を向かせて
プレイさせた方がよかったように思われる。そしてポルトガル戦では、
レッドカードで1枚失って、さらにはPK戦狙いの消極的采配。
エリクソン。最後の最後でキャラガー。


同じワントップにこだわったフランスのアホドメネクさんは、
ジダン世代の最後の輝きとともに、運良く決勝進出で「結果」を残したと
契約2年延長だそうですよ。最後の最後で攻守の要ビエラが負傷交代と、
これまでのツケがまわってきたようなフシがありましたが。交代にしても
システムは代えずに疲れた選手のところに交代で入れるだけ。
アンリも同じく前を向いてプレイすることで機能するので、サアでもトレゼゲでも
始めからどちらかアンリと組ませて見てみたかった。
特に決勝Tに進出してからのフランスの得点はスペイン戦を除き、
ほとんどがセットプレーからの得点(うちPKが2点も)。守備に助けられましたな。
ただリベリーを使い続けて、世界デビューさせたのは功績として認めますw。
リベリー本当にW杯で一気に株を上げました。サプライズで代表入りしたのに
決勝ではすっかりレギュラーの風格。ジダン世代と一緒に7試合戦えた経験は
今後のフランス代表の中心としてリベリーに受け継がれていくことでしょう。


消極的采配といえば、アルゼンチンも忘れられない。
なぜリケルメを下げるのか。ドイツ戦。GKアボンダンシェリの不運な負傷交代はあったが、
残り2つの交代枠を、守備的な方向へ使った消極的な采配が、結果的にPK戦で敗戦に。
グループリーグからその個人の力に加えて、チームの完成度、守備の強さ、と
セルビア・モンテネグロ戦で大勝したときには、一気に優勝候補の呼び声も高まった
アルゼンチン。死のグループ疲労してしまったのだろうか。
守備もアジャラエインセのバックラインに左のソリンが再三上がるのにバランスを見て
センターバックも出来るブルディッソが右に入る。(ドイツ戦はコロッチーニでしたがw)
中盤ではマスチェラーノが支える。攻撃では、リケルメを中心に右のロドリゲスがあがったり、
サビオラテベスがドリブルで仕掛け、クレスポが大事なところで決める。
メッシは鮮烈なデビューを果たし、相変わらずのあのドリブル&スピードは今後も
スター街道まっしぐらだった。なのに敗退した… 1発勝負は本当に怖いもの。
ペッケルマン。


積極的な采配で流れをつかむと言えば、オーストラリアのヒディンク監督。
まんまと日本もその餌食になってしまった。そのオーストラリアとイタリアが
決勝Tの一回戦でぶつかり、ヒディンクがその積極策を温存したまま迎えようとした
延長戦突中間際に、PKを獲得して勝利したイタリア。
もし延長戦になっていたらまた違う結果になったかもしれない。
ヒディンクは積極策を出し惜しんで負けた。ある意味消極的だったのか。
リッピは90分で勝負をつけることを狙っていた。
「監督の采配」が勝負を分けた象徴的な試合だったかもしれない。


中盤(高い位置)からの連動した守備と監督の采配。
上位に進出したチームに共通して見られた要素。
この二つの要素のどちらとも、グループリーグ敗退した日本には欠けていた。
負けるべくして負けたわけだ。

*1:オランダが出ていなかったので

*2:しかしトッティは概ね不調続き