マルタ戦

ややながら見のこの試合。こんな感じで始った。
TVをつけたらすでに1点リードしていた。まさかこのまま終わるとは。





前日の記者会見でも監督は、選手は替えるかもしれないし替えないかもしれない。
と言っていて、すべてはゲームの流れ次第。ということだった。
結果的に交代枠いっぱいの選手が入れ替わったことは、
この試合が思い通りに進まなかったのを反映していると言えるかも。
調子がいい・あるいはいい状態のときはあまり選手交代をしない監督だから、
後半のある段階で、今日は点を取って勝つのも重要だが、
テストをしようと考え直したのかもしれない。


それが後半のいままで見たこともないようなフォーメーションに繋がる…
いままで練習でも試したことがあるのかわからないような中盤。
昨年も北朝鮮戦で大黒をいきなり投入してみたりと、
焦ってくると何をしでかすかわからないジーコさん。
それは肯定的にとらえれば「勝負師の勘」「しっかりした裏付けに基づくもの」
だったのかもしれないが、今回の後半に投入された選手を見ると
「とりあえず彼らを入れておけば、その能力で何とかしてくれるはず」
的な要素があったように思う。


後半開始から坪井に替えて小野。ここはいままでもよくみた形。
日本が攻めに出ようとするときの4バックだ。
後半14分三都主中田浩の交代。お!と思わせる。
あれだけ重用しつづけてきた三都主。ドイツ戦の加地のような事態も
怒らないとも限らない。ここは左SB中田浩もテストか。


と思ったが、その後の交代の布石だったのかもしれない。
直後の後半16分。玉田OUT→小笠原IN。
日本がもっとも有能な選手を抱えるとされたキャプテン翼ポジション。
かつてその攻撃的MFのポジションを争った
中田・中村・小野・小笠原が同じピッチに立つことに。
その後ボランチも出来るとポジションは重ならなくなったが…
一昔前では考えられない布陣だ。
攻撃的な選手を入れすぎるとバランスが崩れると考えたのかな
中田浩の起用を慮ったが、意外と攻撃に参加する中田浩




小笠原・中村・中田の三人のいる中盤といえば、
最終予選〜コンフェデの時のもの。ワントップは柳沢だったが、
今日は大黒。おまけにあのとき不在の小野まで中盤にいる。
なんとも不思議な布陣だ。
中盤を生かす動きをする柳沢に対して、大黒はフィニッシャー。
これだけパスの供給源があれば、いいパスが出て決めてくれるとは
素人の発想だろうか。DFのあいだで大黒は目立たず、連係もかみ合わない。


大黒はパスをもらう動きはいいものの、外からのクロスには
もう1人のFWが欲しいところ。こぼれ球に寄せる能力はすさまじい。
この試合唯一の得点シーンでも、玉田のボレーシュートが転々と
ゴールの中に入っていこうとする後ろを猛然と追いかけていた
スローリプレイの大黒が印象的だった。ポストに当たったり、
キーパーが弾いたとしても、詰めようとする動きだろうか。
普通はボールウォッチャーになりそうなところを詰めているとは
やはり大黒は使えると思わせた。
ポストに嫌われた前半のシュートが決まっていればもしかしたら
流れが変わっていたかもしれない。
しかしそんな大黒でも、後半のこの布陣のなかでは
なんとなく合わない感じ。


後半24分大黒OUT→巻IN、福西OUT→稲本IN。


この瞬間おぉーと感嘆の声を上げた人はどれだけいるだろうか。
ジーコジャパン初戦のジャマイカ戦で見られ、紆余曲折を経て
使われなくなってしまった中田・中村・小野・稲本のいわゆる「黄金の中盤」が
W杯直前の最後の親善試合で再び見られたのだ。感慨深いものがある。
なんとも感慨深い。オマケに今回は「黄金+小笠原」であるから
それ以上のものになるのか…サービス精神旺盛なジーコ
TVの実況では聞いた限りこのことには触れていなかったようだが。


ラストのフォーメーション



中継のTBSの画面ではトップ下に小笠原 中村 小野
と並んだモノを示していたが、どちらかというと
小野は左寄りで、小笠原が中央 中村はどこかしらに顔を出す
といった感じで、中田の方が前に出ていることも。
ワントップになった巻。所属チームの千葉でもワントップを任せられる巻。
これはジーコの計算だったのだろうか。
大黒よりはターゲットマンとして期待できると思わせた。


が、パサーはいるけれども二列目からの
飛び出してゴールを脅かす怖さは少ない。
こんなとき、松井がいたら…と思った人は他にもいただろう。
小笠原・小野がFWを追い越す動きを見せようとしていたが、フィニッシュに繋がらない。
前半に見られたロングボールのサイドチェンジも影を潜め、
中田の速いパスも受けての方で収まらない。


巻は単純なクロスに顔をだすものの、技術のある中盤が紡ぎ出す
連係のシーンには見当たらない。千葉なら絡んでくるところだが
いきなりの試合では無理からぬ。ジーコからも前で張れとの指示があったかもしれない。
ワンタッチでなかから切り崩そうとするものの、
相手DFの引いた狭いところで網にかかってしまう。
左サイドから中田浩がオーバーラップを試みるが、うまくいかない。
ボランチの中田も左サイドに顔を出す。
逆に右サイドの駒野が手持ちぶさたに孤立していたのが印象的。
今日はサイドが個人で勝負するシーンに欠けていたとも言うが
特に後半は左に攻撃が集中していた。駒野はDFのバランスを
取っていた。本当は中田浩の役目じゃないのか。
後半、得点の臭いがした小野のダイレクトボレーは、
右から供給されたボールだっただけに、もっと右サイドを使えたら良かった。


前がかりで攻めてのカウンターにも前半のラストにはひやっと
させられたり、後半も連係プレーが繋がらずにボールを奪われたり
なんとなく低調。たしかにドイツ戦の疲労があったとも。
コンディション的には不調だったのか、それとも100%の力を使うと
ドイツ戦のようにアフターケアが必要になるのか。
W杯本大会では、そんなことも言ってられないから23人選ばれた
のではないだろうか。全体的に練習が続いて疲労が蓄積していた
のかもしれないし、明日は休養ともいう。よく動いたあとはよく休むべし。


戦術的なところ・連係などはこれまでかなり長い合宿で積み重なれて
来たところがあると思うし、「連係を・精度を高めていきたい」
とキャプテンがコメントしたところで、これ以上どれだけ上がるものでもない。
シュートの決定力もそう。決定力についてあれこれまわりからいわれても
選手はシュート練習はたくさんやっているのだから。


それよりも万全のコンディションで初戦を迎えられるように
気をつけてもらいたい。それだけ。
今日の試合は攻めあぐねたときにどう崩すかが、途中からテーマに
なったと思う。
ブラジル・クロアチア戦などは、逆にどう守ってからカウンターにつなげる
かの方が重要になってくると思うが、3戦目ブラジルが守りに来るような
時、オーストラリアにリードされて守りに入られたとき、など
守られたときにどうするかの予行演習にはなったと思う。
足りないピースはターゲットのまわりの2列目からの飛び出しか。


もう少し迫力がほしいところと、パスで崩すだけでなく
ドリブルやリズムを変えないと難しい。
今日は先発に玉田が使われたが、きっと本番では途中交代で
そういうドリブル突破が期待されているのが玉田だろう。
巻・大黒も併用されることはなかったが、巻の体を張ったプレイに
大黒がゴールを狙うコンビネーションも見たかったといえば見たかった。
今日は中盤を厚くするより、大黒を残したままの方が点が取れたかもしれない。


「課題」が見つかったといっても、個人的には今日はたくさん選手が
試合に出たことが「収穫」だったと思う。いきなり本大会で使われる
より、メンバーが交代した後の連係の確認の問題点は、
まわりがいうより選手達が痛感しているはず。それが収穫。
もっとも開幕一週間切った段階で、
課題と収穫なんてこんな直前であれこれいうような問題じゃない。
クロアチアが負けたとか低調だとかの情報もたぶん役に立たない。
開幕したら、横一線。マスコミは盛り上げるためにそういうけれども、
ここまで来たら一喜一憂しても仕方ない、と思った。